本を出版したければ経験が必要?そうとは言い切れない理由
ベストセラー作家の講演会で、質疑応答の時間に、こんな質問がありました。 「私も出版したいのですが、どうしたらよいでしょうか?」 作家は一言、こう答えました。 「色々な経験をしてください」 質問した人はきっと狐に摘ままれたような顔をしていたでしょうね。 よく、人生経験を積んでいない人の書く話は薄っぺらいなどといいます。漫画ばかり読んでいる人は漫画家にはなれない、とか言いますよね。 なんか、深いわーとスルーしがちですが、人生経験ってなんでしょうね。 単にたくさんの経験をしているとも違うでしょうし、強いて言えば、波乱万丈、最高も最低も味わい尽くしたような人生でしょうか? もしそうであれば、私の知人に、ぴったりの人がいます。 彼は学生のとき両親を亡くし、学校を辞めて幼い弟妹を養いました。20代になり、思い立って、数万円だけもって世界放浪に出発。旅先では、現地の人と仲良くなり、奢られながら生活。帰国後に起業。複数の会社を立ち上げ、何度も挫折しながら黒字経営を実現。そして、超ハイスペック女性から逆プロポーズを受け結婚しました。 まさに、マンガの主人公のような波乱万丈のサクセスストーリー。 彼に本を出したいと相談され、過去何度か打ち合わせにいったのですが… 全然面白い企画ができないのです。やっとできた企画も、編集会議で没になりました。 こんなに魅力的な人が本を出せないのは、私の能力がないせいか、と落ち込みました。 彼の人生そのものがコンテンツ、と言えるかもしれませんが、それでは単なる自伝になってしまいます。 実は、彼のようにすごい経験をしており、人として魅力的な人が本を出せないケースに何度か遭遇しました。 あらためて考えてみたのですが、やはり人生経験を積んだだけで本は出せない、と思います。 それは、ただ経験したに、すぎないからです。これらの素晴らしい経験から伝えたいことを、彼はひとつも持っていませんでした。 著者になる近道はむしろ、少ない体験でも、それを究極に突き詰めることだと思います。 その経験から得た感情や知識をじっくり煮詰め、深堀し、人に伝えられるかたちにすることです 煮詰めた結果、自分なりの仮説がうまれるかもしれません。それを検証するために経験したことは、すべてが蓄積され、あますことなく本のネタになると思います。つまり、テーマを持って経験していくことが大事では、と思うのです。 一番もったいないと思うのは、自分にはまだ経験が少ないから本は出せない、と諦めてしまうことです。そんなコンプレックスはすぐに捨ててしまいましょう。