【出版は相性がすべて】作家×編集者・ミスマッチだとSAN値下がる
作家(以下、著者)と編集者は二人三脚で本を作ります。
私は雑誌ではなく、単行本(書籍)の編集者なので、一冊の本を作るには最低でも3か月ほどの時間がかかります。
その間、著者とは同じ釜の飯を食べるくらいの勢いで、がっつり濃い関係を築くことになります。
合わない著者とやることになると地獄です。地獄の釜めしです。
フリーランスになって、人間関係の自由を手に入れたと思いきや、実際はまったく逆でした。
仕事を選べない(弱い)立場だと、出版社から紹介された著者と強制的にエンゲージするケースも多いもの。実際にはじめてみないと、どんな人かも分からないため、もはや運任せの「ガチャ」と言えるでしょう。
SSR著者が「文章がうまくて(あるいはライターを自分で雇えて)、締め切り前倒しで原稿を仕上げ、素直で丁寧で、こつこつ手売りしてくれる」だとしたら、「あっ、ハズレだな…」と思うのはその逆です。
まあ、多少のハズレなら我慢します。仕上がるまでの辛抱ですから。それに、最初の出版で勝手がわからないと、どうやってふるまえばいいのかを知らないのも当たり前だからです。
しかし、ハズレどころかSAN値ゴリゴリ削られるのは、メンヘラのパターンです。
作家とメンヘラの親和性は高く(?)、むしろいい意味でまともじゃないから本を書けるという面もあるかもしれません。その迷惑な特性を作家性の象徴として振りかざしてくるヤツは万死に値しますが。
一発で商品価値のある文章にまで仕上げられる人はほぼいないため、必然的に編集者には、品質を上げる努力が課せられます。
へたくそなのに、生意気だ! 口を出すな! 直すな!というタイプのメンヘラだと大変困ります。
読者にとって全然興味のなさそうなパートをカットしようものなら「大切なものを奪われた!」とギャン泣きされたり……。
表紙が嫌だ! お前のせいで病気が悪化した! 人ごろしが!と凸してきたり(元気じゃん)。
不安症で、朝から深夜まで休みなくチャットを送ってきたり……。
編集者という仕事は好きだったはずなのだけど、ガチャが外れると全部イヤになって、旅に出たくなります。相手次第で、労働負荷が何十倍にも、何万倍にもアップする。それが私のような弱小編集者です。
もちろん著者側も「子供に親は選べない!」ではありませんが、チェンジで!と言いたいこと山のごとしでしょう。
編集者と著者の関係は、相性が何より大事なのだと思います。
私のように会社から言われてイヤイヤ担当する編集者が付くと、お互いにうまくいかないケースが多いように思います。
最初から、
編集者「この人のよさは私が誰より引き出せる!」
著者「この人ならすべて任せられる! 私以上に私を知ってくれている!」
「「合体!!!!」」
……のような、相思相愛な関係ではじめると、結構うまくいきます。
ベストセラーを連発している天才編集者に、どうしてそんなにうまくいくのか?と尋ねたことがあります。
著者と相性が悪いということはないのか?と。
すると、彼は「自分がいいな人と思った人とだけ仕事してるから、相性が合わないことはまずない」とのことでした。さらに「向こうもこちらを信頼して、素直に委ねてくれる人しか選ばない」とも。
編集者と著者は対等な関係ですが、どうしても編集者が主導で進めることになります。そんな中、主張が激しく、全部自分で主導したいタイプの著者だとまったく前にすすみません。